E. グリーグ
抒情小曲集
audite 92.555 SACD
2007年9月12日リリース
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キングインターナショナル

ノルウェーの国民的作曲家、エドヴァルド・グリーグは今年没後100年を迎えます。この抒情小曲集はグリーグの生涯に渡って作曲されており、この曲集はグリーグの音楽人生そのものと言えるのではないでしょうか。  演奏は原田英代。彼女は東京藝術大学及び大学院にて学び、その後シュトゥットガルト音大、ウィーン音大に学び、モスクワのチャイコフスキー音楽院教授、ヴィクトール・メルジャーノフ氏のもとで研鑚を積みました。1984年ジュネーヴ国際音楽コンクールで最高位を獲得、1991年シューベルト国際ピアノコンクール優勝、ウィーン20世紀のピアノ音楽コンクール第2位、1993年第1回ラフマニノフ国際ピアノコンクールに入賞し特別賞を受賞とピアニストとして着実と成長を遂げ、国際的な演奏活動を続けています。このアルバムでは66曲ある抒情小曲集から彼女自身が22曲を選び出し、瑞々しい感性により詩的でロマンティックな旋律を紡ぎ出し、たっぷりと歌い上げ情景描き出しています。また、原田英代は今年(2007年)9月と11月に日本でコンサートが予定されています。

批評
レコード芸術

グリーグの百回忌に臨み、原田英代が編んだ《抒情小曲集》のアルバム。全体の3分の1ほどにあたる22曲が収録されているが、それぞれに多彩な風景や情感を映し出しながらも、一貫して深い歌心をもって丹念に綴られた、奥行きのある詩集になっている。  いずれも歌としての魅力に充ちており、潤沢な響きと情感をもって、しっかりと語られていく。愛らしい小曲、というようにたんに微笑みを散らすのではなく、そうした魅力を内に籠めながら、内省的情感や歌の芯に迫っていくように、遠大な世界を抱いている。  シューベルトで名演を聴かせるピアニストだけあって、情感と語りの豊かさが、量感のあるたっぷりした響きのなかに堂々と充ちてくる。メランコリーに存在感があり、濃厚で内密な世界が曲ごとに描かれていく。文学的な思索を背景として、透明な響きや神秘的な煌きにも随所で澄んだ感性を息づかせている。ずっしりした余韻をもって響く、心底の共感に導かれた深い歌だ。 【青澤隆明】 ( 2008年 1月号 )