F. シューベルト
さすらい人幻想曲 D 760
ピアノ・ソナタ第21番変ロ長調 D 960
audite 92.575 SACD
2011年9月16日リリース
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キングインターナショナル

情熱と知性のピアニスト、原田英代 シューベルトの音楽世界を緻密に表現 ドイツ、日本を中心に世界で活躍するピアニスト、原田英代。これまでにグリーグの抒情小曲集(AU92555)、チャイコフスキー&ラフマニノフ(AU92569)、シューマンの幻想曲、クライスレリアーナ、アラベスク(AU92577)をリリース。いずれも高い評価を受け、特にシューマンはレコード芸術特選盤をはじめ国内外のレヴューで大絶賛され、原田の底知れぬ音楽的才能を知らしめました。  今回リリースするのは、シューベルトの2大作品。原田は2003年から2010年にかけてシューベルトの全貌を伝える連続演奏会を行い、歌曲、室内楽を通してシューベルトの音楽に迫ってきました。作品の研究と分析に余念がない原田の成果が結実した内容です。

批評
レコード芸術

・・・初めの《さすらい人》で、原田英代はスケールの大きさと個性の強さとを。理に叶った音楽的表現の中で、ぞんぶんに指し示す。冒頭のきわめてダイナミックなリズムの強調と、ただならぬ推進力。次いで、つと息をひそめるピアニッシモの呼吸。この鮮やかなコントラストが、全曲にわたる幅広い表現力。激しい情念とデリケートな詩情を結ぶ振幅の豊かさのシンボルとなる。飛翔と沈潜とを共に余すところなく弾き表しながら、演奏は絶妙に均衡を保ち、破綻には傾かない。ソナタにも、ほぼ同じことが癒えよう。スケールの大きな飄々とした表現は、この曲に秘められたすべてを謳い上げるものである。死の予感も、それゆえにこそ燃え上がる生への渇望も、追想あるいは見果てぬ夢の限りない哀切さも、幼児のように無邪気な感動も…。・・・これは、このソナタに現われた、古今有数の演奏だと判断していい。必聴のディスクだ。
【濱田滋郎】(2012年2月号 特選盤)

批評
レコード芸術

・・・原田は昨年インタヴュー(本誌10月号)で、これまでの2枚のアルバムは「生と死」をテーマにしていると語っていたが、それは現実的な《幻想曲》としばしば彼岸の曲と言われる第21番を組み合わせたこのアルバムにも当てはまるかもしれない。《さすらい人幻想曲》の第1楽章は引き締まったテンポで飛ばす。タッチは硬質で見事に磨き上げられている。第2楽章はがらりと変えてテンポは極めて遅く、リズムが縮小されるところから勢いを増して迫真の情念に。緩と急、静と動、激しさと静けさの対照を思い切りつける。情念(アフェクト)の表現をとことん突き詰め、時に極端に打ち出す。しかもそれにはちゃんとした理論的観念的な裏づけがある。・・・ソナタ第21番は当然ながらがらりと趣を変えるが、主張が明快で大変に個性的だ。第1楽章の中でも強弱の差が大きく、時に激しい激情をぶつける。この曲に瞑想と彼岸の世界を求める人には刺激が強すぎるかもしれないが、仕上がりの精度は極めて高く、大変に聴き応えのある秀演であることは間違いない。
【那須田務】(2012年2月号 特選盤)

批評
Fono Forum (ドイツ)

原田英代は稀に遭遇する芸術家に属する。彼女が録音するにあたって、驚くほど音楽的精度を磨きあげ、精神的に崇高な境地にいたるまで曲づくりにおいて妥協を許さず、多くの時間をかけていることは明白である。繊細なチャイコフスキーの小品「四季」の次に出されたCD作品では情感豊かなシューマンのハ長調「幻 想曲」でファンを驚かせてくれたが、今度はシューベルトの二つの作品を発表することに精魂込めた。 数あるピアニストの中で、この芸術家は独自の特徴を刻印することを心得ている。まず第一に挙げられるのが彼女の演奏における純粋な美しさである。「さすらい人幻想曲」と同様、ソナタにおいても、別世界への超越的な移行を促されるかのようである。丸みのある豊かな音、息づくフレーズ、明晰なる建設的な構成観、クライマックスへの繊細なる感性、絶え間ない覚醒感。これらすべてが、録音技術と素晴らしいグランドピアノの助けと相まって、説得力ある表現を可能にした。 原田はまず「さすらい人幻想曲」を真にドラマティックに自信に満ちた音色で弾きだすものの、力強い音が決して技巧をみせびらかすことにならないよう心がけている。第2楽章アダージオでは、強い憧憬の力を感じさせる緊張感高い表現に彼女の真の驚くべき才能が発揮されている。そして、ソナタにおいても彼女は精神的に満たされた演奏で、作品の表す苦悩を超え、その苦悩に共感する人間の暖かい光を与えてくれるのである。

2011年11月ドイツの音楽誌「Fono Forum」で「今月の星」に選定
批評
Pizzicato (ルクセンブルグ)

予期しなかった驚くべきことについて語るべきなのか、それとも類まれな才能を認めるべく語るべきなのか? いずれにしても日本人ピアニスト原田英代のシューべルトのプログラムは、数多の名だたるアーテイストの録音よりもはるかに強烈な感動を与えてくれる。彼女は既に長い間コンクールでの入賞や数々の受賞で名前を世に知らせてきた。そして今このシューベルトの録音も我々に聞き耳を立てさせる。それはピアノの自然な響きをそのまま反映させる録音の卓越した技術ゆえのみならず、何よりもまず、ここに収められた両方の作品の内面の世界を深く追求した演奏の美しさと自然さゆえのことである、 通常、「さすらい人幻想 曲」と呼ばれる幻想曲ハ長調 D760は、しばしばピアニストの名人芸を誇示することに利用される作品であるが、ここにも必要不可欠なヴィルトゥオーゾの演奏芸術は存在するものの、その喜ばしくエネルギッシュな大胆さに加えて、このピアニストの演奏は滅多に味わうことのない観念的な深みに至っている。原田は音楽の奥深くまで耳を研ぎ澄まし、シューベルトの豊饒な内面の世界を表すようゆったりと弾き込んでいる。極めて美しい第2楽章アダージオ がこのように心を揺さぶられるほど弾かれる演奏を聞くことはきわめて稀である。 このピアニストは最後のピアノソナタ変ロ長調において、さらに深くシューベルトの奥義を究める。これもどちらかというと悠然と弾かれているが(スヴャトスラフ・リヒテルのように46分10秒の演奏時間)、それは"遅い"という感じではなく、内省的で、物思いに耽っているようであり、それどころか夢想しているかのようである。このことは特に第1楽章の"モルト・モデラート"で主題とモチーフを弾き分けとき、きわだっている。更に瞑想的で、そのうえ深い精神性を湛えているのが第2楽章のアンダンテ・ソステヌートである。ここではシューベルトの悲劇的な特性が、感動させる深い精神性と極度の緊張で表現されている。 原田英代は私たちにこの録音を贈ってくれた、まぎれもなくこの演奏で、原田英代はビッグネームのピアニストたちと共に名を連ねることとなるだろう。

2011年12月ルクセンブルグの「Pizzicato」でスーパーソニック賞を受賞